位相シフト光干渉法を利用したセンサの研究開発
公開:2020年9月18日
最終更新:2026年7月10日 (内容を一部更新)
2008年、極限環境下における地震観測を実現するため、これまでにない新しい技術開発を模索し始めていました。電子回路やセンサ部への給電が不要な地震計を志向し、光ファイバーを利用した光センサーに着目。ただ、当時一般的だった光干渉方式では長期間安定した出力を得ることが難しく、環境条件の厳しいフィールド使用には適さないと考えられました。
そこで、私たちは計測中に振動により変動する光の入力値について、パルス波を使えば、干渉したレベルとともに、計測中に変動した入力光のレベルも測定できないかと考え、基礎開発に着手。追って2011年には、光パルス波の一部の位相を変えることにより、光の半波長を超えて変動する距離を測定する方法を考案し、光センサシステムを開発しました。2012年末に開催された応用物理学会光波センシング技術研究会で、初めて「位相シフト光干渉法」という新しい独自技術について発表。そこで、実用化の検証を行うため、共同研究のパートナー探しをスタートさせました。

そんな折、今までにない国産技術で産油国等が抱える技術課題に対して、ソリューションを提供する事業を独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が募集していました。
光センサシステムは、光送受信装置は電気を使用するものの、光ファイバとその先につけたセンサには電気が必要ないため、特に厳しい環境下(砂漠、深海、高温高圧)でメンテナンスが少なくて済む(バッテリー交換が不要である)ことや、高周波数帯域、高感度という点が石油探査業界のニーズに合致し、技術ソリューション事業のフェーズ1に採択されました。フェーズ1では2014年度から2015年度までの約2年間で、その期間中に試作品を作り、テストフィールドでの観測や物理探査を行い、通常物理探査で使用されるセンサと遜色ないデータが示されました。この結果を受け、2016年度から2017年度のフェーズ2に進み、菊間国家石油備蓄基地の観測坑で数か月間観測を実施。2018年度も続けてJOGMECの資金援助を受け、フィージビリティスタディとして改良検証を行いました。※採択された事業についてはJOGMECのHPより公開

センサユニットの拡大図
システム構成JOGMEC技術ソリューション事業のフェーズ1が終った翌年の2016年、文部科学省の次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト(火山PJ)にも、光センサシステムは課題Eとして採択されました。JOGMECのご了承・協力を得ながら、秋田大学(当時)の筒井先生に採択機関・事業責任者になっていただき、火山観測への応用実験を始めました。京都大学・井口先生のご厚意もあり、新しくできた桜島高免坑道で観測を実施。筒井先生には桜島構造探査の際に取得した光センサシステムのデータを使って桜島の地下構造についてご報告いただきました。この際の評価が次年度以降の課題B2-2への採択に繋がり、2027年度まで継続される予定です。
課題B2-2において、2017年度は浅間山にて長期観測を実施。その後、文科省評価会で出される課題と向き合い、2018年度は固有振動数が30Hz弱のセンサを作成。2019年度は京都大学・中道先生とともに桜島ハルタ山観測点で、雷多発時期を含めた約半年間連続的観測を行いました。耐雷性能については、今年度の解析結果報告にご期待ください。※火山PJの報告書は文科省のHPより公開

光送受信装置
三成分センサ
光ファイバケーブル東京パワーテクノロジー株式会社の協力のもと、2019年6月から福島第二原子力発電所の観測坑に光センサシステムを設置しています。1回の欠測はあったものの迅速な復旧対応を行い、1年を超える連続観測を実現しました。本取り組みにより、実環境下における長期運用の可能性を確認し、継続的な計測に向けた課題の抽出と改良を進めています。
近年、カーボンニュートラルの実現に向け、CO₂の回収・貯留(CCS)においては、長期間にわたり安全かつ安定したモニタリングの必要性が高まっています。一方で、これらの多くは海底下に位置し、電源供給が困難であることや、電子機器の長期信頼性に課題があるなど、従来技術では対応が難しい環境にあります。
当社の光センサ技術は、センサ部に電源を必要としない特性を有しており、極限環境下でも計測が可能であることから、これらの課題に対する新たな手段として適用が期待されています。
持続可能なCCS運用には、①貯留層内の予期せぬCO₂移動、②誘発地震、③漏洩といった異常を検知することが不可欠です。当社は、空間的・時間的な連続変化を伴う異常を費用対効果の高い方法でリアルタイムに検知できる光ハイブリッドOBCシステムを開発しています。このシステムは、DAS(分散型音響センサ)と、超疎配置で構成された高感度3軸光学式加速度計および光学式ハイドロフォンから構成されています(4コンポーネント、4C)。さらに、海底常設地震発生源(実現可能性調査中)を用いることで、継続的なアクティブモニタリングが可能となり、エアガン船や3D/2Dモニタリング調査の回数削減を目指しています。
こうした背景のもと、本技術を基盤とした研究開発が日本財団–DeepStar連携技術開発助成プログラムに採択され、2023年6月より助成を受けながら海底常設型モニタリングシステムの開発に取り組んでいます。現在、本プロジェクトは社会実装を見据えた実証フェーズへと進んでいます。

光ハイブリッドOBCシステムのイメージ

本プロジェクトでは、実環境に近い条件下において、センシング技術の成立性および運用性の検証を進めています。2026年5月に実施した諏訪湖での実証試験では、4Cセンサモジュールを取り付けた光ファイバケーブルを湖底へ設置し、実際の運用を想定した計測環境を構築しました。その上で、人工的に振動を発生させるバイブレータ震源やエアガン震源など複数の手法を用い、異なる条件下で振動を与えながら計測を実施し、実環境に近い状態での観測を行っています。また、2週間の連続観測を行うことで、自然地震の観測も行いました。
これらの試験を通じて、設置から計測、データ取得、解析に至る一連のプロセスを確認し、実環境における運用が可能かどうかを評価しています。本試験は、今後の海底環境への適用に向けた重要な検証ステップとして位置付けられます。
以下は、諏訪湖における実証試験の様子です。4Cセンサモジュールの設置作業、振動発生試験、観測データの確認など、実証プロセスの一部をご覧いただけます。
本プロジェクトは、
日本財団-DeepStar連携技術開発助成プログラムからの
助成を受けて実施しています。
本技術は、火山観測や実環境での運用を通じて、高精度な地震計測が可能であることを確認してきました。一方で、社会インフラへの適用に向けては、より安定した計測を実現するための技術的課題も残されています。
特に、光ファイバの高い感度による外乱の影響を抑制する必要があり、低周波ノイズの低減や、センサ筐体・ファイバ構造の改良など、安定性向上に向けた取り組みを進めています。
これらの技術改善を積み重ねることで、電源供給が難しい海底環境においても長期的かつ安定したモニタリングを実現し、CO₂貯留の安全性確保に貢献する基盤技術として、社会インフラへの実装を目指しています。

電子部品を使わない極限環境センシング位相シフト光干渉法による光センサ地震計測システム詳しく見る
極限環境ロボット研究所
採用ページ