HERO Lab.では、高温・高線量下など人の立ち入りが難しい「極限環境」で、⼈の代わりに作業するロボットやセンサ技術の開発に取り組んでいます。研究開発の都合上、一部のみの掲載になりますが、より広い分野に適用できる独創的なロボットや製品をご紹介します。
Truss Armは、福島第一原子力発電所の原子炉格納容器の内部調査や橋梁やプラントの点検作業などを遠隔操作で行うことが可能な、著しく長尺で軽量なロボットアームです。空気圧で伸展するテレスコピックロッドを複数のワイヤでトラス的に支持する構造であり、短く格納された姿勢から、撓みがない長尺に伸展した姿勢までを実現できます。また、テレスコピックロッド内に格納される複数の関節によって屈曲した姿勢を取ることも可能です。さらに、全てのモータや制御装置はロボットアームの根本に配置されるので、高い耐放射線性を持ちます。東京電力ホールディングス株式会社経営技術戦略研究所との共同研究によって開発されました。
3m試作機を用いた駆動原理検証実験
7.7m試作機を用いた伸縮動作実験
岡朋宏,木村直人,和田周賢,広瀬茂男,”テレスコピックロッドとトラス状に配置された干渉ワイヤ駆動を用いた長尺アーム機構「Truss Arm」の提案”,ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2023, pp. 2A–B10. 一般社団法人 日本機械学会, June 2023
岡朋宏,木村直人,内島大作,菊池史朗,鎌原健志,田尾健一,広瀬茂男,”屈曲関節を有するワイヤ干渉駆動型テレスコピック長尺アーム「Truss Arm」の伸縮制御”,第41回日本ロボット学会学術講演会, 第41回日本ロボット学会学術講演会講演予稿集, 一般社団法人 日本ロボット学会 ,September 2023
Tomohiro Oka, Naoto Kimura, Shigeo Hirose,” Truss Arm : the World’s Longest Telescopic Arm with Highest Payload and with No Deflection for the Decommissioning of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant”, The 16th IFToMM World Congress, Advances in Mechanism and Machine Science. IFToMM WC 2023,November 2023
Phoenix-Hは、福島第一原子力発電所の廃炉作業で不可欠な残置物解体・回収作業などを遠隔操作で遂行可能な汎用型ロボットです。洗浄(除染)しやすく狭隘部も通過可能な6輪移動機構のほか、空気圧を用いた荷重補償機構により油圧並み可搬重量を持つ電動アームを備えています。また、ツールチェンジャを手先に備え、切断ツール・高圧洗浄ツール・拡張グリッパツールなどの作業に応じた種々のツールを遠隔操作で着脱できます。廃炉現場での実作業を担う東京パワーテクノロジー株式会社との共同研究によって開発されました。
木村直人, 和田周賢, 広瀬茂男,”空圧バランサ付き高可搬重量アーム機構と接地圧分布可変式6輪車両機構からなる廃炉作業用遠隔操作ロボットPhoenix-Hの開発 ”,ロボティクス・メカトロニクス講演会2024, 1P2-A02,2024
Phoenix-Lは、福島第一原子力発電所の廃炉作業で不可欠な点検作業や軽量な残置物回収などを、作業者に代わって遠隔操作で遂行可能な汎用型ロボットです。現場で特に必要とされない階段昇降機能を除外して洗浄(除染)しやすい6輪方式を採用し、複数のカメラを任意位置に移動できるカメラスタンドと、モータや制御回路をすべて基台部に収め機械要素のみで駆動されるアーム機構で、高い遠隔操作性と耐放射線性を実現しています。東京パワーテクノロジー株式会社との共同研究によって開発されました。
Phoenix-Lの紹介
Phoenix-Lを用いた遠隔操縦による3Dマッピング
木村直人, 和田周賢, 岡朋宏, 広瀬茂男,”廃炉作業を目的とした移動作業ロボット"Phoenix-L"の開発 ”,ロボティクス・メカトロニクス講演会2023, 2A2-B09, 2023.
木村直人, 和田周賢, 岡朋宏, 広瀬茂男,”自重補償カメラスタンドと視覚式触覚センサを用いた遠隔操作ロボットの操縦支援システムの開発 ”,ロボティクス・メカトロニクス講演会2023,2A1-B09,2023.
木村 直人, 樋口 竣哉, 広瀬 茂男,擬似平行開閉と大開閉を両立する4節リンク型グリッパの量の総合に向けた機構定数解析,第41回日本ロボット学会学術講演会,1C4-02,2023.
Buoy Boatは、福島第一原子力発電所の建屋内の水中の残置物を回収するための遠隔操作ロボットです。Buoy Boatに搭載されたハンドは内部の空気量の調整が可能な浮体を備えており、浮力を利用することで水中での重量物のハンドリングが容易です。また、コンパクトなサイズ・形状に設計されており、狭隘な穴から投入することが可能です。さらに、Buoy Boatは水上を移動するボート型のロボットなので、水底に沈んだ粉塵を巻き上げることはなく、ロボットに備えたカメラからの視界を悪化させず、確実な作業を行えます。
「Buoy Boat」水上実験動画
大嶋 俊之, 岡 朋宏, 木村 直人, 広瀬 茂男,浮体を有する把持機構を備えた水中重量物回収ロボット“Buoy Boat”の開発,第42回日本ロボット学会学術講演会,1E5-02,2024
風神は、風力により複雑な長距離配管を移動できる管内カメラです。カメラ以外には電子機器を搭載しないシンプルな軽量設計で、配管開口部に取り付けたブロアからの風圧を受けて推進します。独自の機構構造と駆動方式により管内での摩擦を大きく低減することで、従来の配管点検ロボットでは困難であった長距離かつ複雑な配管内の点検を可能にしました。誰でも操作しやすく、国内のインフラ関連設備で大規模な運用実績があります。
木村直人, 岡朋宏, 広瀬茂男,”風力により複雑な長距離配管を移動できる管内カメラ「風神」の開発 ”,第40回日本ロボット学会学術講演会,3G1-06,2022.
熊手は遠隔で操作ができる強力な吸引性能を持つ乾湿両用掃除ロボットです。小型の掃除機を遠隔で操縦することができるため、通常、人が入るには狭すぎる場所や、天井が低すぎる空間での掃除に威力を発揮します。熊手は、一般的な工業用の自動掃除ロボットよりも強力な吸引力を持つ上に、人が遠隔で現場の様子を見ながら操縦するため、ゴミの取り残しや帰還不能状態に陥る心配がありません。火力発電所内のホットウェルと呼ばれるピットでの清掃作業を代替する目的で開発されました。
HEROインナーマスクは不織布マスクを着用した際の息苦しさを軽減するインナーフレームです。一般的なマスク用インナーフレームはマスクを顔から浮かせて呼気を逃がすことで息苦しさを軽減させますが、顔とマスクの間に大きな隙間ができてしまうので、十分な感染予防効果を望めません。HEROインナーマスクはフレームに備えられた独自の仕切板機構により、顔とマスクの間に隙間を作らない正しいマスク着用法をしながら、マスク内で呼気を一方通行に整流させることができるので、息苦しさが軽減します。
極限環境ロボット研究所
採用ページHAKUSANが大切にしている価値観「おもしろいモノをつくろう」。
この原点となる研究開発の取り組みについてご紹介します。