研究開発

緊急地震速報と現地地震計測の活用

緊急地震速報と建物地震応答シミュレーションのイメージ公開:2023年1月10日
※HAKUSAN LABO(公開:2012年)の内容をリライトしています。

地震応答シミュレーション

防災科学技術研究所が設置している基盤強震ネットワーク(Kik-Net)のデータ を用い、地下から地上に伝わる地震加速度の増幅を可視化しました。可視化にあたって使用した観測データは、2007年4月に三重県で発生したほぼ直下型の地震記録です。映像化により、地下200mから地上に横揺れが到達するまで約0.25秒ほど経過している様子が良く判ります。また、地表に20階建てで1次固有周期2.0秒のオフィスビルが存在しているものとして、同じデータを用いてビルの揺れを含めて可視化してみました。地表部分の加速度は900galに達する大きさですが、ごく短い周期のパルス的な地震記録なので、ビルの応答も高次モードが伝わるだけで、20階での変位も僅かに4cm弱となりました。地震波の測定のみならず、地盤、建物の応答を可視化することで実際に被害をもたらす地震なのかどうかがよくわかります。

  • シミュレーション1
  • シミュレーション2(オフィスビルあり)

直下型地震と建物の応答

大地震の時、あなたの家はどう揺れるのでしょうか?地震に弱いところはないのでしょうか?それを知るには、日常的に観測することが重要です。白山工業では安価な高精度地震計「有線LAN地震計」を開発、販売しています。 この有線LAN地震計をある一戸建て(木造3階建て)に設置して実際の地震の観測を日々しています。設置箇所は、建物の各階の四隅と中心の15台です。設置した有線LAN地震計で2009年1月30日の4時29分に実際に発生した地震を観測しました。

  • 発生日時:2009年1月30日04時29分
  • 震源:東京都多摩東部 深さ:約30km M3.8
  • 観測地:多摩東部 震央距離:約5km

有線LAN地震計によるデータを可視化することで設置した建物の各部の動きがよくわかります。また、右のグラフでは、建物の南北方向(NS)と東西(EW)の力(縦軸)と変形(横軸)の関係を時系列に表示しています。これを見ることで、建物の被害の程度がわかります。

設置場所震度階計測震度
1階 北西震度11.1
南西震度11.1
南東震度11.2
北東震度11.1
2階 北西震度21.6
南西震度21.6
南東震度21.7
北東震度21.6
中央震度21.6
3階 北西震度21.9
南西震度22.0
南東震度22.0
北東震度22.0
中央震度22.0

3階建て木造家屋の直下型地震と建物の応答

今回、2009年1月30日の東京都多摩東部で発生した地震を有線LAN地震計によりデータを可視化しましたが、その他にも以下のような地震を観測しています。

  • 2009/01/22 21:21 震源 三宅島近海 深さ 約144km M5.1
  • 2009/01/26 17:55 震源 栃木県南部 深さ 約140km M4.7
  • 2009/01/30 05:05 震源 東京都多摩東部 深さ 約30km M3.8
  • 2009/02/01 06:51 震源 茨城県沖 深さ 約10Km M5.8
  • 2009/02/01 14:44 震源 千葉県北西部 深さ 約60km M3.6
  • 2009/02/17 04:54 震源 千葉県北西部 深さ 約30km M4.9
  • 2009/02/20 18:17 震源 茨城県南部 深さ 約70km M4.6
  • 2009/03/13 21:22 震源 千葉県南部 深さ 約80km M3.7

このような観測を続けることにより、次のようなことが判ってきます。

  • ■設計の検証
    設計時に想定した動きと合っているか?
    局所的に揺れが大きいところはないか?
  • ■大地震時の揺れの予測
    大地震時には建物の一部が壊れ、揺れ方が変わってきますが、中小地震時の揺れ方を観測しておけば、ある程度の予測ができます。
  • ■耐震診断への活用
    中小地震時の揺れ方を検証することにより、耐震補強が必要な部位を決めることができます。

小中学校の新地震防災対策

緊急地震速報と現地地震計測の活用

地震被害が発生したときに、重要な防災対策拠点となるのが、各地域の公立小・中学校です。しかし、震災時の防災拠点とされる施設でありながら耐震上問題がある小・中学校が全国で半分以上、約7万校もあると言われています。そのため気象庁の「緊急地震速報」を活用して災害時に生徒や児童を助けようとの動きが始まりつつあります。「緊急地震速報」は地震の際に警報を発して人的被害を最小限に抑えるための有効な安全管理システムですが、校舎の耐震性については別の課題として取り組む必要があります。しかし、全ての学校に充分な耐震対策を行うには多額の費用が必要で、自治体財政では難しいのが現状です。そこで、「緊急地震速報」に加え、校舎へ地震計を設置することで、耐震補強計画や被害を抑えるためのより具体的な対策を検討することが可能になります。耐震補強には多大なコストと時間を必要としますが、安価で信頼性の高い地震計を設置することで実際の地震データに基づいた耐震補強が可能になり、コストを大きく削減できます。

鉄筋3階建て校舎に地震計を設置した場合の建物の応答
  • ■校舎の揺れを見ることができ、各所の揺れの大きさを比較できます
  • ■同心円で示した図は層間変形角を表し、内側の円から小破→大破となる段階を示します
  • ■右上の図は建物への入力波形の応答スペクトル(黄)と設計用のスペクトル(赤)の比較です

以上のデータを総合し、この建物の耐震性の検討、被災程度の概略評価を行います。

「緊急地震速報」に加え「校舎に地震計」を設置するメリット
  • ・中小地震時に、実際の揺れを計測し、建物の弱点を把握
  • ・大地震時に向けて耐震補強の必要性評価
  • ・予算にあわせた段階的な補強計画
  • ・地震後の住民避難場所としての適用性の判断材料
  • ・ 耐震性評価に基づいた安全な児童、教員の避難経路、避難場所の特定

高精度で安価な地震計およびネットワークシステムが可能となったことにより、耐震診断や被災予測だけではなく、実測に基づく判断材料を提供することが可能になっています。
「緊急地震速報」に加えた「地震計」の設置は、安価に始められるだけでなく、今すぐに多拠点で始めることのできる地震災害対策です。

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