HAKUSANライブラリー

HAKUSANの取り組みをより良く理解していただくための知識や用語解説などを掲載しています。

地震の用語集

※50音順で掲載しています。

あ行

異常震域

通常震源より近い場所ほど地震動が大きく、遠くに行くに従って小さくなっていくが、震源と観測点の位置関係により、震源より遠くの地域のほうが地震動が大きくなる場合がある。この大きく揺れる場所を異常震域と言う。このような現象が発生する理由は、震源が深い場合に沈み込んでいる硬いプレートを地震波が減衰せずに伝播するためと考えられている。以下、2例をあげる。

異常震域 例1 2022年5月9日17時33分 遠州灘 参考文献/出典:気象庁/震度データベース検索
遠州灘で発生した地震だが、震度1以上を観測したのは関東地方である。

異常震域 例2 2021年9月29日17時37分 日本海中部 参考文献/出典:気象庁/震度データベース検索
日本海側で発生した地震であるが、主に有感だった地域は東北から関東にかけての太平洋沿岸である。

液状化

土にかかる応力は、粒子間力(有効応力)と間隙水圧の和として表される。水を含んだ土がせん断力を受けて土粒子間の間隙が小さくなろうとすると、そこに存在している間隙水の圧力が上がる。そのため、土粒子間に働く力が小さくなり、ついには土粒子が水中に浮いてしまっている状態となる。この状態では、せん断応力による抵抗が失われ、全体が液体と似た挙動を示す。この現象を液状化と言う。

N値

地層の硬さを示す指標のこと。日本工業規格(JIS)のA 1219に記述がある。
質量63.5±0.5kgのドライブハンマーを76±1cm自由落下させて、ボーリングロッド頭部に取り付けたノッキングブロックを打撃し、ボーリングロッド先端に取り付けた標準貫入試験用サンプラーを地盤に30cm打ち込むのに要する打撃回数。

か行

海溝

海底が溝のように非常に深くなっているところ。プレートが他のプレートの下に沈み込んでいく場所にできる。最深はマリアナ海溝で水深約11km。

活断層

数十万年前以降に繰り返し活動し、将来も活動すると考えられる断層のこと。第四紀(260万年前以降)中に活動した証拠のある断層全てを「活断層」と呼ぶこともある。

参考文献/出典:活断層とは何か?,国土地理院
Q値

減衰の指標。Qが大きいほど減衰が小さく、小さいほど減衰が大きい。Qの逆数(1/Q)を減衰の強さとして用いることがある。
Q値は周波数依存した形 Q=A×f-B という形で表されることが多い。

空白域(地震の空白域)

プレート境界など、くり返し地震が発生する領域の中で、しばらく地震が発生していない地域のこと。
【「地震の基礎知識」4章を参照】

グーテンベルク・リヒターの式

ある地域、ある期間に発生した地震のマグニチュードM別の頻度n(M)を表す式のこと。
  log n(M) = a -bM
bは1程度。すなわち、Mが1小さくなると発生頻度が10倍となる。
【「地震の基礎知識」6-2 マグニチュードの頻度分布 を参照】

傾斜計

地盤の傾斜を測定する装置のこと。
水管傾斜計、振り子型傾斜計に大別される。

傾斜計

水管傾斜計は、例えば 京都大学桜島火山観測所のYouTube動画「マグマの動きをとらえろ!桜島高免新坑道導入」 がわかりやすい。

工学的基盤、地震基盤

工学的基盤は、ビルなどの建物を建てるときの基礎となる地盤で、S波速度が400m/s程度。
地震基盤は、S波速度が3km/s程度の地盤。

固有周期

地盤や建築物が特徴的に揺れる周期。
地震により励起される地盤の固有周期と建築物の固有周期が重なると増幅されて建物への被害が大きくなる。
【「地震の基礎知識」8章を参照】

さ行

地震波(P波、S波、レーリー波、ラブ波)

・地震波とは、地下の断層などが動くことなどにより変動が発生したときに生じる波のこと。

・P波は地震波のうち、物質の内部を通る実体波のひとつである。縦波とも言われ、波の伝播方向と振動方向が同じである。【「地震の基礎知識」5章 を参照】

・S波は地震波のうち、物質の内部を通る実体波のひとつである。横波とも言われ、波の伝播方向と振動方向が垂直である。【「地震の基礎知識」5章 を参照】

・レーリー波は表面波の一種。地表が上下動に進行方向に対して回転するように振動する。【「地震の基礎知識」5章 を参照】

・ラブ波は表面波の一種。地表に対して水平に、進行方向に対して垂直に振動する。【「地震の基礎知識」5章 を参照】

常時微動

地面は無感ながら、様々なノイズにより常時振動している。これを常時微動と言う。常時微動は、地表で卓越した表面波、特にレーリー波だと思っている人が多い。

震央

震源の真上の地表の点のこと。
【「地震の基礎知識」1章 を参照】

震央距離

震央から観測点までの距離のこと。
【「地震の基礎知識」1章 を参照】

震源

地震が始まった地点のこと。
【「地震の基礎知識」1章 を参照】

震源距離

観測点から震源までの距離のこと。
【「地震の基礎知識」1章 を参照】

震度、計測震度

地震により、ある地点がどのくらいゆれたかを示す尺度を震度と言う。
計測震度は、それまで職員の体感でつけられていた震度を、統一するために、地震波形から決められた方法により求められるようにした指標である。計算方法は 気象庁サイト「計測震度の算出方法」参照

前兆

(大)地震が発生する前に見えるとされる現象のこと。様々な現象が該当すると言われている。現在も地震・火山噴火予知研究協議会が存在する。しかし、平成25年11月に、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の推進について」が建議され、防災・減災に貢献する災害科学の一部として計画を推進する方針に転換されている。(文部科学省サイト

走時

震源から発生した地震波が、地球内部を通って、ある観測点に到達する時間を走時と言う。さまざまな震央距離の観測点と、地震波の到達する時間との関係を走時曲線と言う。

走時曲線

走時曲線_グラフ 参考文献/出典:理科年表 平成13年,国立天文台

横軸が震央距離(度)、縦軸が時間のグラフである。たとえばPという名前がついている曲線は、P波の走時を表している。震央角距離で60度のあたりにある観測点は、地震発生後約10分でP波が到達するということである。Sは同じくS波の走時を表している。Kは外核を通る地震波、Iは内角を通る地震波、小文字はどこで反射しているかを示している。例えばPKPは地震で生じたP波が外核を通り(K)、そのあとマントル内でP波となって観測される波のころであり、PcPはマントル-外核境界で反射されてP波となって観測される波のことである。

走時曲線_図1

走時曲線_図2

た行

断層(正断層、逆断層、トランスフォーム断層)

地面に力が加わって、せん断破壊を生じたものを断層と言う。
力の加わり方で、断層の形状が異なる。

正断層 正断層:伸張応力場で形成される断層。

逆断層 逆断層:圧縮応力場で形成される断層。

左横ずれ断層 右横ずれ断層

横ずれ断層:断層面が垂直に近く、断層に沿って水平方向のずれが卓越している断層。断層面に向かったとき、断層の向こう側が相対的に右に動いているのを右横ずれ断層、左に動いているのを左横ずれ断層と言う。

トランスフォーム断層 トランスフォーム断層:プレートの横ずれ境界に沿ってプレートどうしが横ずれ運動をする断層。

地殻、マントル(グーテンベルク不連続面、モホロビチッチ不連続面)

・地殻とは、地表からモホロビチッチ不連続面までの領域のこと。
海洋地殻と大陸地殻がある。海洋地殻は厚さ数km、大陸地殻は数10km程度。

・マントルとは、モホロビチッチ不連続面から、外核とのの境界までの領域のことで、地下650km付近で上部マントルと下部マントルに分かれる。 これはマントルの主成分であるかんらん石の相転移による不連続面であると考えられている。よく「マントル対流」と言うが、マントルは個体である。

・コア(核)とは、マントルの下の地球内部にある、液体状の領域(外核)と、そのまた内部の固体の領域(内核)のこと。核の成分は密度や隕石とのアナロジーから、鉄ニッケル合金だと思われている。外核は(P波を通さないので)液体、内核は固体と思われている。

・モホロビチッチ不連続面とは、モホロビチッチが発見した地球内部の境界のこと。震央距離200kmより遠いところで地震波の見かけ速度が大きくなることから、地下数十kmの深さに明瞭な不連続面があると考えた。この不連続面をモホロビチッチ不連続面という。今日、この境界より上を地殻、下をマントルという。地殻とマントルは岩石の組成が異なる。

・グーテンベルク不連続面:マントル中を伝わって最初に観測点に到着するP波の走時曲線が、角震央距離で100度を少し越えた辺りで消えてしまう現象について、マントルの下の地球中心部に液体状のコア(核)が存在すると考えられていた。グーテンベルクはその深さを2900kmと推定した。このマントルとコアとの境界をグーテンベルク不連続面と言う。

地球内部構造

地殻の構造

中央海嶺

大洋底のほぼ中央にある大規模な海底山脈のことで、地球を取り巻くように連なっている。ここでは絶え間なく新しい海洋底が生産されて、海嶺の外側に拡大している。【「地震の基礎知識」2章(余談)プレートの運動 を参照】

津波

「なんらかの原因によってきわめて短時間に発生した大規模な海の波」のこと。
津波の原因の多くは、海域で発生した地震に伴う海底地殻変動であるが、地すべりや火山活動、隕石落下などでも発生する。地すべりでは1792年の「島原大変肥後迷惑」がある。2022年1月、トンガ諸島のフンガ・トンガーフンガ・ハアパイ火山の大規模噴火に伴って、地球規模の津波が発生した。
津波の速度は√ghで表される。gは重力加速度、hは水深。深いほど津波の速度は速く、水深1000mで秒速100mにもなる。

トラフ

トラフとは、海溝よりも浅い、細長い海底盆地のこと。海溝とトラフとの違いは、水深が深いか浅いかによる。【「地震の基礎知識」3章 を参照】

は行

PGA、PGV

・PGAはPeak Ground Acceleration の略で、その観測点における地表の最大加速度のこと。

・PGVはPeak Ground Velocity の略で、その観測点における地表の最大速度のことである。

プレートテクトニクス、プレート(リソスフェア、アセノスフェア、スラブ)

・プレートテクトニクスとは、地表が何枚かの硬いプレートで覆われていて、それが移動していくという学説のこと。【「地震の基礎知識」2章 を参照】

・プレートとは、地表を覆っている硬い岩盤のこと。

・リソスフェアとは、地表から地下数十キロに及ぶ、硬い岩盤のこと。この領域が複数に分かれて地表のプレートを構成している。地殻からマントル最上部の硬い領域である。モホロビチッチ不連続面の上部・下部両方を含む。

・アセノスフェアとは、リソスフェアの下の粘性の低い層のこと。マントルが部分溶融しているところとも考えられている。プレートはアセノスフェアの上を運動していると考えられている。

・スラブ:沈み込んだプレートをスラブと言う。日本付近では、東北日本太平洋側の、北米プレートの下に沈み込んでいる太平洋プレートや、東海から西南日本太平洋側の、ユーラシアプレートの下にもぐりこんでいるフィルピン海プレートがある。

本震、余震、前震

ある地域で発生する一連の地震において、一番大きいものを本震、本震より前に発生する小さめの地震を前震、本震の後に引き続いて起きるたくさんの小地震を余震と言う。本震のマグニチュードMと最大余震のマグニチュードAの差は0~2.0程度までばらつき、その中央値は1.4である。 ただし、本震のマグニチュードMが大きくなると、M-Aの値が小さくなる傾向にあるらしい。

ま行

マグニチュード

地震の規模を表す指標のこと。6.2章を参照。
地震学的にはモーメントマグニチュードが良く使われる。日本では気象庁が発表する気象庁マグニチュードが良く耳にするかも知れない。

メカニズム解

発震機構解とも言う。地震情報の絵でよく見られる、白黒のビーチボール型の図。地震を観測した観測点における初動の押し引きの分布を球面に投影したもの。白い部分が初動の「引き」、黒い部分が初動の「押し」の領域。この「押し引き」は断層運動において、押される方向を「押し」と言う。

メカニズム解

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