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はくさん博士の基礎講座

地震とは

7.地震波の増幅と減衰

地震波が伝わる際に、振幅の増幅や減衰が発生します。
減衰の要因としては、地震波が伝わる間に減衰する、距離減衰があげられます。一般に、震源から遠くなるほど減衰が大きくなります。ただし、震源より遠い地点の方が減衰が少なく、震源より近い地点よりも振幅が大きい「異常震域」が発生する場合もあります。
増幅の要因としては、地表付近の地面の状態の影響が非常に大きいです。特に軟弱地盤においてはS波の速度が遅くなるために、S波振幅が大きくなって増幅する現象がおきます。


7-1.地震波の減衰

・減衰要因:震源からの距離で、遠いほど減衰します。
・距離減衰式としては、司・翠川(1999)が有名です。

PGA、PGVと断層からの距離との関係
参考文献/出典:司・翠,PGA、PGVと断層からの距離との関係(1999)

P.G.A: Peak Ground Acceleration 地表最大加速度
P.G.V.: Peak Ground Velocity 地表最大速度


7-2.S波の増幅

S波(横波)の速度は地表に近くなるに従い遅くなります。 速度が遅くなると波のエネルギーが集中して増幅します。従って、S波速度が遅い堆積層が厚いほど、S波は増幅します。
また、S波は、堆積層と基盤の境界と、地表で重複反射をして、堆積層によって特徴的な周波数成分の波が増幅する場合があります。


7-3.P波の増幅

・P波速度は深さ方向にあまり変化せず、表層ではだいたい1500m/sです。

・この速度はだいたい水のP波速度と一致します。

つまり、表層地盤はだいたい水が飽和しているともいえます。

従って、P波はあまり増幅しません。
ただし、水に不飽和な場合、地下水よりも上の所ではP波速度が落ち、増幅されます。


8.長周期地震動

・周期数秒以上のゆっくりした周期の地震動のことを長周期地震動と言います。

・2003年十勝沖地震において、苫小牧の石油タンクが揺れて火災が発生したことから注目度が高まっています。

十勝沖地震の周期8秒の最大速度応答
参考文献/出典:2003年十勝沖地震の
周期8秒の最大速度応答,防災科学技術研究所
http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/quake/

十勝沖地震での苫小牧観測点の速度応答スペクトル
参考文献/出典:畑山 他,(2003),消防研究所

2003年十勝沖地震における苫小牧観測点の速度応答スペクトル(減衰定数1%)
周期7-8秒のところにピークが見られます。

・2004の紀伊半島沖の地震でも、大阪、名古屋などで長周期地震動が観測されています。

紀伊半島沖地震の応答スペクトル
参考文献/出典:2004年紀伊半島沖地震の
応答スペクトル,防災科学技術研究所
http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/quake/

紀伊半島沖地震でのKiKnet千葉観測点の速度応答スペクトル
参考文献/出典:畑山 他,(2004),消防研究所

2004年紀伊半島沖地震におけKiKnet千葉観測点の速度応答スペクトル(減衰定数1%)


紀伊半島沖地震でのKnet堺観測点の速度応答スペクトル 参考文献/出典:畑山 他,(2004),消防研究所

2004年紀伊半島沖地震におけKnet堺観測点の速度応答スペクトル(減衰定数1%)

紀伊半島沖地震でのKiKnet四日市観測点の速度応答スペクトル
参考文献/出典:畑山 他,(2004),消防研究所

2004年紀伊半島沖地震におけKnet四日市観測点の速度応答スペクトル(減衰定数1%)

堺や四日市では周期6-7秒程度、千葉では周期9秒と12秒あたりの周期成分にピークがあるスペクトルとなっています。


(参考:データ解析_建物の振動解析):
応答スペクトル

地震動に対する応答スペクトルとは、「足元の地面が、ある地震動によって、ある周期(周波数)でどの程度の最大振幅を出すかを計算したもの」で、加速度、速度、変位それぞれに応じて、加速度応答スペクトル、速度応答スペクトル、変位応答スペクトルと言います。

したがって、応答スペクトルは地震動によって異なりますし、同じ地震でも場所によって異なります。

建築物などに入力された地震波は粘性抵抗により減衰します。この粘性抵抗は波の速度に比例しますので、そのような項を含む運動方程式を立てて、ある地震波が入力されたときの、ある周期(周波数)における最大加速度、最大速度、最大変位を求めていきます。


応答スペクトルの計算方法の概念図

フーリエスペクトルと加速度応答スペクトル
参考文献/出典:フーリエスペクトルと加速度応答スペクトル,気象庁
http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/kyoshin/kaisetsu/outou.htm

ある入力波形に対して、様々な固有周期を持つ減衰定数が等しい物体の応答が最大になる振幅をプロットしていきます。右の図の例では、固有周期T1の物体の応答波形の最大振幅がA1で、同様に固有周期T2ではA2、固有周期T3ではA3となり、それらの線を結んで一番右の応答スペクトルのグラフができます。もちろん、入力波形が異なれば応答スペクトルも異なります。


建物の固有周期と応答スペクトル

・建物にはそれぞれゆれやすい周期があり、それを固有周期といいます。

・鉄筋コンクリート建築物の固有周期は、経験的に以下の式が使われています。

固有周期をT(秒)、建築物の高さをH(m)とすると、 T=0.02H
(T=0.15Hと書いてある本もあります)

ちなみに普通の鉄筋コンクリートの建物の高さは、1階あたり約3mです。
T=0.02H をもとに計算しますと、10階建ての鉄筋コンクリートの建物の高さはだいたい3×10で30mとなりますので、固有周期は0.02×30=0.6(秒)、固有周波数は1/0.6≒1.7(Hz)となります。

建築物の減衰定数は数%程度ですので、応答スペクトルの計算の際には減衰定数にこの程度の値を入れるのが普通となっているようです。
ある地震波が入力されたときに、応答スペクトルの計算による卓越周期と、建物の固有周期が一致した場合、その建物が大きく揺れることが予想されます。


8-1.建築物と長周期地震動

周期数秒に及ぶ長周期地震動が問題になるのは、超高層ビルや、ビルのエレベータなどの施設です。建築基準法では高さ60m以上とそれ以下で基準の区別がありますので、高さ60m以上を超高層ビルと言っても差し支えなさそうです。ちなみに前項の式を当てはめてみると、高さ60mのビルの固有周期は約1.2秒となります。また、エレベータは屋上からワイヤーで吊り下げてありますので、固有周期が長くなります。

関東平野、大阪平野、濃尾平野など、日本の大都市は堆積層からなる平野であり、大地震時、周期数秒の長周期地震動が発生することが懸念されています。2004年新潟県中越地震で、東京の高層ビルのエレベータに被害が生じたことを覚えている方も多いと思います。

超高層ビルが揺れる周期(固有周期)が長周期地震動による揺れの周期と良く似ているため、大地震時に超高層ビルがどのように振舞うかは最近非常に注目されています。例えば防災科研のEディフェンス実験では、長周期地震動における高層ビル上層部の室内の状態が再現されています。

(例えば http://www.bosai.go.jp/hyogo/research/movie/movie.html の、長周期地震動を受ける高層建物のダンパー補強と室内対策に関する震動台実験 や、地震災害時における医療施設の機能保持評価のための震動台実験 の映像を参照)



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